星語り(一番星のなる木)

星と天界の音楽

三鷹ネットワーク大学にて

星のソムリエ 星空散歩」を発表してきました。

当初、3人(愛弟子OBさん含む)の発表でしたが急遽1名欠席となってしまい、

直前に(どちらかが)ダブルヘッダーで、私が務めさせていただきました。


もう二回目となると吹っ切れた感があって、

かなりぶっきらぼうな表現が続出してしまいましたが、

お聞き苦しかったかなぁ・・・ と、今になって反省しております。


本来ならば一回目でとちった話を修正して、

「もっとうまく話すぞー」などと思っていたのですが、

さすがに連続すると、

最初にお話しした星空案内が

「あれ? さっき話したな」という錯覚を起こしてました。

また、練習も含めてタイムオーバーになってしまったので、

どんどん早口になってしまったのも反省材料です。

せっかく星空を楽しむために時間を作って聞きに来てくれたのに、

なんかせわしかったかな?

ちゃんとタイムキーパーを見て、

時間を計りながら落ち着いて話すことができたら、

予定通りのお話ができたんじゃないかな、と思っています。


(正直、タイムキーパーなんて見る余裕すらなかった・・・)


ここで私が発表するつもりで下書きしたお話を掲載します。

どんな内容を話すつもりだったかの全貌です(おはずかしい…)。

本番前に練習を二回、そのたびに原稿を読み返し、

頭に叩き込んでいたはずなのに、

結局は思いつきで関係ない話をしてしまったり、

アドリブを入れて時間に追われ無理に終わらせなければならなくなり

「あれっ? 時間内に、しかも予定より早く終わらせちゃった?」

なんてことしてしまいました。


しかも当日の朝まで使用する画像選びでご迷惑をおかけしたのに、

星空散歩の中で紹介できたのは2枚だけでした。


反省会では「80点ぐらいの出来かな」

などと偉そうなこと言ってしまいましたが、

伝えたかった二点を忘れることなく(記憶から飛んで行くことなく)

お話しできたので良かったと思っています。


今回はソムリエ講座を受講している半数の方々にお会いできたし、

非常に実りある、そして同じ志を歩んでいる方々の表情を見ることが出来て

とても嬉しく思いました。

現実逃避ではありませんが、ホッとしたひととき、至福のひとときでした。


残るはあとひとつ、観望会のテストだけ。

がんばるぞ~





【勇者ヘラクレスの大冒険 -天空を駆け巡る-】

 これから初夏を迎え、夏至を過ぎると、いよいよ本格的な夏がやってきます。(まぁ、その前に、ちょっと梅雨入りですかね)星空で四季を辿ってみると、様々な表情に気がついて、地上の折々とは、また、異なる移ろいを感じることができるでしょう。


 星空は“地球温暖化”に左右されることなく、きっちりと暦通りの姿を見せてくれるので、太古の人たちが、そのことに気づいたのも無理はありません。そこに目を付け、次にやってくる季節を知る暦を作ったのもうなづけることでしょう。

 たとえば、地上が真冬で北風が吹いていたって、明け方に七夕の星や、さそりのS字を見れば、これからやってくる季節の予測は立てられるし、真夏のギラギラする太陽に火照った大地の上に立っていても、曙の中にシリウスの輝きやオリオンの姿を見れば、気持ちだけでも涼めるかもしれません。季節外れの星空散歩もいいものです。ぜひ、早起きして見て下さい。きっと得した気分になれますよ。


 さて、今日はギリシア神話最大の英雄と誉れ高いヘラクレスの姿を辿って星空散歩をご一緒しましょう。みなさんは、ヘラクレスという名前を一度は聞いたことがあるかもしれませんね。

 注意深く聞いていた方はわかったかもしれませんが、ギリシア神話で語られる英雄はヘラクレス。そして星座名はヘルクレス座と紹介しました。これは、星座名など学名はラテン語で表記する決まりがあるために生じた表記で些細な違いですが、実は深い意味がありますので、覚えておくと良いでしょう。

 このヘラクレス、芸術家たちに好んで取り上げられていますが、絵画や音楽、映画、戯曲など、あらゆるところに登場していますので興味のある方は探してみてはいかがでしょうか?音楽なんてヘンデルやヴィヴァルディがオペラにしています。映画の場合は、神話と全く関係のないストーリーで、肉体派が演じることが多く、そのほとんどは神話とは関係のないコメディタッチですね。シュワルツネッガーあたりが思たるところでしょうか。

 アガサ・クリスティに登場する名探偵エルキュール・ポアロのエルキュールなんてヘラクレスのフランス読みです。英語読みはハーキュリー。ラテン語ではヘルクレス。星座名や学名はラテン語で表すことが伝統的になっていますから、ヘラクレスの星座名はヘルクレス座となります。ただ、何をしたとか、どんな英雄だったのかということになると、ギリシア神話を読んだことがないと、わからないかもしれません。今日の星空散歩は、このヘラクレスの姿を型どったヘルクレス座を中心に紹介するつもりなので、まずは、彼がどんな英雄だったかをお話ししたいと思います。


 ヘラクレスギリシア神話最高神ゼウスとアルクメーネとの間に生まれました。つまり半神です。生まれた当初はアルケイデスという名前でした。ペルセウスアンドロメダの間に生まれた孫の一人で「アルカイオスの血を引くもの」という意味なのですが、のちに過ちの償いをすることから「ヘラの栄光」という意味でヘラクレスと改名します。ヘラはゼウスの正妻です。もうおわかりですね? ヘラクレスはゼウスの浮気相手の子だったのです。神のクセして女たらしのゼウス。今で言えば、その行いは究極のストーカーですよ。

 実は私は強力な雨男なのですが、こうした星空案内の場で、よくゼウスの説明に「ゼウスは女ったらし」だの「神のクセして女性を追いかけ回すストーカー」などとゼウスの悪口を言ってしまうのですが、天上からそれを聞かれてしまっているんでしょうかね?ゼウスは天候を左右する神でもあるわけです。ほとんどの観察会が悪天候です。まぁ、ゼウスの名誉のために言っておくなら、当時の人々の思想の中には「神との間に身ごもった女性から英雄が生まれ、人々を救ってくれる」ならたとえ人妻であろうと歓迎すべきという考え方が先行し、ヘラクレスをはじめとする英雄物語には必ず神に介入してもらったのだろうと、作家の阿刀田高さんは語っています。また国王たちは、人々に尊敬や威厳を保つために「私は神の血を引く末裔だ」などとといったでっち上げを平気でしていたから、ゼウスの方ではいい迷惑なのかもしれません。あちこちでゼウスが土地の女性との間に子供を作って、それが英雄伝説になるのは当時としては流行でもあったのです。


 話をヘラクレスに戻します。彼のお守役に任命されたヘルメスが、彼を不死身にしようと企んで、ゼウスの妻であるヘラのお乳を飲ませようとしました。うたた寝をしていたヘラは、女神とはいえ突然乳首を吸われてビックリしたのは言うまでもありません。あわてて自分の胸に抱きついている赤子を力づくで振り放します。しかし、赤子とはいえ、ゼウスの血を引く彼の吸引力は人並みはずれ、ヘラの胸からはお乳が「ブワーッ」と吹き出し、何と天上にまで降り掛かってしまうほどでした。そしてそれが天の川になったのです。英語で天の川のことをミルキー・ウェイと呼ぶのはこのためです。


 その最後は、自ら火に焼かれ母から授かった肉体だけが滅び、ゼウスから受け継いだ精神だけとなり天上へと昇って行きました。そしてオリンポスの神々に迎えられ、ゼウス自ら彼を星空の間に置いて星座にしたのです。星座になって美しく輝きだしたのを見て、ヘラが黙っているわけはありません。夫への抵抗として星座としての輝きを弱め、英雄の姿をボカしてしまったのです。これではせっかくの英雄の姿も、東京のような都会ではおろか、よほど空の暗い場所でないと、ヘルクレス座を見ることは難しくなってしまいました。

 またヘラクレスと顔を付き合わせているのは、こちらも半神アスクレピオスがモデルになっていると言うへびつかい座です。北半球に住む私たちから見ると、ヘラクレスは、ヘラの憎しみを勝って、逆さまに貼付けられてしまっていますが、じつはこれは後から付け足されたエピードに過ぎません。 実は、現在の星空を見ればもっともらしい、このヘラの介入ですが、実際は違うのです。というのは、古代天文詩人アラトスという人が天文叙事詩を紀元前3世紀頃に残しているのですが、そこでこの星座をヘルクレス座と呼んでいません。「竜の頭の近くに歩み続ける男。彼の名はない。彼はひざまづく者と呼ばれている」と書き記しています。

 実は、このヘルクレス座はもっと北よりに、位置していて天頂で両者が天を二分していました。これはどういうことかというと、地球の地軸が約2万6千万年で一回転すると言う歳差という現象のために星空の位置が今と昔とではずいぶん変わってしまったということです。たとえば、今の北極星は昔は北極星ではなく、昔はりゅう座のツバーンという星が北極星であったり。ピラミッドが建設されていた頃、北極星であった記録が残っています。

 歳差の話でおもしろいのは、これまたヘラクレスに退治されたうみへび座にあります。この星座は全天に88ある星座ではもっとも巨大な星座なのですが、図体ばかりが大きく、なんと冬のこいぬ座の後からつづいて、夏のてんびん座まで伸びています。実に東西100度以上の角度を持っています。なんでこんなに長いのでしょうか。なんでここに、こんなだらだらと続く星座を作ったのでしょうか?

 先ほどの歳差の話に戻ると、この星座が作られた頃、このうみへび座はもっともっと北よりに位置していました。天の赤道に巻付くように。つまり、天の赤道は季節に関わらず、そして地域に関わらず、真東から真西に伸びています。うみへび座の配列を、天の赤道に絡めることで、大洋や砂漠を行き交う旅人や商人たちは正確に方角を知ることができました。真西に伸びる鎌首、真東を指し示すしっぽ。この並びは暗闇を行き交う人々に、どれほどの明かりを投げかけてくれたことでしょうか。星座が現代に受け継がれ、親しまれているのは、このあたりに理由があるのかもしれません。


 ヘラクレスがどこにいるか探ってみましょう。もともとが暗い星々で形作られているため、形は「おおっ!なるほど」という結びができますが、なかなか見つけにくいかもしれません。たとえばいくつかの方法がありますが、うしかい座アルクトゥルスとこと座のヴェガの真ん中にあるとか、夏の大三角をバタンと倒してみるとか、今頃なら夜の10時ぐらいに頭上を通過するとか・・・。説明するのは簡単なんですけど、暗い星を探しながらだと、実は骨が折れます。

 ヘラクレスは神話の中で、エウリテス王から言いつけられた十二の難行が最も有名なエピソードですが、その一番目に登場するのはネメアの森に住む化け獅子です。これは人喰いライオンで、ヘラクレスによって退治されますが、普段からヘラクレスを嫌っていたヘラが、英雄を苦しめた功績によって、褒美として頭上にライオンを置いて星座としました。

 二番目の難行にはうみへび座になっているレルネの谷に住むヒドラ退治があります。このエピソードにはお化け蟹も登場し、ヒドラの加勢をしますが、登場して間もなく踏みつぶされて死んでしまいました。ここでもヘラはヘラクレスを苦しめた褒美として星座にしました。

 他に星座にまつわる難行は11番目の、ヘスペリデスの林檎を取ってくるというエピソードがあります。ヘスペリデスというのは宵の明星「ヘスペロスたち」ということで、西の方を意味する言葉です。このリンゴを守っていたのが竜で、のちにりゅう座に加えてもらいました。このエピソードには、天を担ぐ巨人アトラスも登場し、近くのうしかい座のモデルという説もあります。そして、アトラスの子供たちもヒアデスとプレアデスと揃って星空の間で輝いています。ちなみに現在明けの明星として東の空に輝く金星も、6月9日に外合となり、夏も本番になれば宵の明星として輝くことになります。


 多くの情報を星空に書き込んだ古代の人たちも知らなかったことがあります。それは宇宙の広がりでした。ある程度の遠さを知っていたことがわかっていますが、それも現代天文学が切り開いた宇宙の距離まではわかりませんでした。それもそのはず、いくら星空が暗いと入っても、肉眼で見える限界というものがあります。

 今紹介した星座の中には、想像もできないほど遠くの天体が発見され、宇宙の起源や、しくみといった人類の疑問に答えてくれるべくヒントを与えてくれています。たとえばうみへび座にあるNGC3242は木星状星雲と呼ばれる天体で、星が大爆発を起した成れの果てです。超新星爆発と言う、宇宙の中でも最大級と言われる爆発が宇宙のあちこちで発生し、その度に近隣の文明が無くなっているのかもしれません。2000光年近く離れた場所にあるので、地球には影響はありませんが、驚異的な爆発です。

 また、南の空にはしし座に続いておとめ座が見えていますが、M87という巨大な楕円銀河が見えています。この天体、ウルトラマンの生みの親である実は円谷英二がウルトラの星として白羽の矢を立てたほど、超巨大銀河なのですが、テレビ台本を写植した職人の打ち間違いによりM78となってしまった曰く付きの銀河です。まん丸い形をしていますがぎっしりと太陽のような恒星がつまっている天体です。地球からの距離はおよそ6000万光年。私たちの銀河系は、このM87を中心にしたおとめ座銀河団のはずれある局部銀河団に所属してしています。ヘルクレス座球状星団M13は肉眼でも存在を確認できるほど明るいので、星座を作った古代人にも見えていたかもしれません。この天体には1974年、アレシボ天文台から「いるかもしれない」文明に向けてメッセージを発しました。もしも誰かが受け取って返信を返してくれると仮定すると、早くても5万年先のことです。


 ヘラクレスに追われるように蟹、獅子、蛇たちが西へ西へと移動してゆくのが、今宵の星座位置を観察してみるとわかると思います。かにもししもうみへびも、春の星座ですから、夏ともなれば西へ西へ移動するのは当然の成り行きですが、ギリシア神話に親しんだ後に星空を眺めるとどうでしょう?日周運動というメカニズムの中にも、古代の人たちが楽しみながら夜空に描いた一大絵巻が浮かび上がって来て、「現代」の中にある「古」に触れることができるのではないでしょうか?


 今回は、ヘラクレスのエピソードを頼りに、ヘルクレス座から始めて春夏の星座たちを紹介しました。半年経つと古代エチオピア国にまつわる登場人物たちが揃って星空に現れます。今度は英雄ペルセウスアンドロメダ姫を中心に、秋の夜空いっぱいに繰り広げますので、機会がありましたら、またそのエピソードもお話ししたいと思います。今日はお付き合いいただきまして、本当にありがとうございました。


「今宵の星空」として

 現在、かに座に火星。26日にNASAが打ち上げたフェニックスが無事に地表に不時着しましたが、小さく、赤く見えています。しし座には土星。来年、リングが見えなくなってしまうと言う非常に珍しい現象が起きますが、リングあっての土星ですので、なーんかつまらん姿です。この二つの惑星は7月11日にしし座でランデブーをします。金星もそろそろ見え始めるかもしれませんが、地平線の見渡せるような場所を探すことがポイントです。夜半の明星と言われる木星も、すでに夜半前には東南の空に昇ってきます。


使用画像と投影順

1(天体名)土星

 (画像URL)http://www.nao.ac.jp/Gallery/SolSys/Saturn/sat_0810.jpg

2(天体名)火星

 (画像URL)http://www.naoj.org/Pressrelease/2003/09/Mars/Mars_030823_s.jpg

3(天体名)NGC3242(うみへび座木星状星雲)

 (画像URL)http://www.nao.ac.jp/Gallery/Nebulae/3242rgb.jpg

4(天体名)M13(ヘルクレス座球状星団

 (画像URL)http://www.nao.ac.jp/Gallery/Messiers/m13.jpg

5(天体名)M87(おとめ座の系外星雲)

 (画像URL)http://www.nao.ac.jp/Gallery/Messiers/m87.jpg