オルフェウス(モンテヴェルディ)

夏の星空を思い浮かべるとき、

私は真っ先にこと座のヴェガの輝きを思い出します。

小学五年生のとき(今から何十何前だ?)、

母親に起こしてもらって初めて深夜の星空を眺めた時、

まず最初に探したのがヴェガだったからです。


「夜も終わっちゃったのに、誰も見てないのに、いるのか?」

というとんでもない疑問に答えを見つけようと思い立ったのがヴェガ探しです。


この星座に伝わる伝説は、

ギリシア神話の中でも一、ニを争う悲劇が知られていますが、

その題材が音楽(古代の音楽はあくまでも数学の道具)だったこともあり、

後の作曲家たちは「オルフェウスの末裔」と彼を崇拝し崇めてきました。


最近は「夜想曲」ばかりを取り上げてきましたので、

ここは夏だし、夏と言ったらこと座、こと座と言ったら「オルフェウス」の物語。

ということで、様々な作曲家たちが神話を取り上げた音楽(特にオペラ)を紹介します。


まずは、この物語でその名を歴史書に記したモンテヴェルディの「オルフェオ

モンテヴェルディガリレオ・ガリレイと同じ年(1567)に生まれ、

ガリレオが亡くなった翌年(1643)に生涯を閉じました。

彼がこのテーマを選んだのは、その前にオペラの誕生と言われる

ペーリとカッチーニによる「エウリディチェ」が

貴族の間でヒットしたことによる影響です(こちらも取り上げるつもりです)。


この頃のオペラは貴族の祝典(結婚式とかのお祝い)で上演されることが多かったため、

この悲劇もエンディングを書き換えられ(ペーリとカッチーニがハッピーエンド)ました。

しかし、モンテヴェルディは書き換えることなく、

オルフェウスとエウリディチェの死の別れで終えています(そしてアポロに導かれて天上へ)。


初演は1607年。ガリレオがまだ天体望遠鏡を空に向ける前。

当時の世界観としては天上と地上との落差は大きく、

頭上には神の住む世界が広がっていた時代だったので、

今の演奏や、私たちが当時の彼らと同じ気持ちになることはないのでしょうが、

ヴェガの輝きを見ながら耳を傾けると、

今でも静かな夜にはこと座の方向から琴を爪弾く音が聞こえてきそうです。


私が最初に聴いたのはジョン・エリオット・ガーディナーの演奏です。

昨年、SACDでリリースされたジョルディ・サヴァールの演奏は、

ライヴ・レコーディングですが、SACDが大きく生かされて臨場感たっぷりの音場でした。


f:id:tupichancosmos:20150710053235j:image


音楽に聴くギリシア神話