ちょうど一年前、春先の講座にあわせて時代劇小説を読み始めました。ほぼ一年かけて井上ひさしの『四千万歩の男』を読み終え、それ以来時代劇小説にハマってしまってます(とはいえ、ジャンルは天文に関わるものだけ)。そして、今までまったく顧みることのなかった日本の天文学の面白さに辿り着いたのは、これらの小説群だったと言っても言い過ぎではないかもしれません。
そして、今回のこの一冊。近代日本天文学の祖といえる麻田剛立。過去の自分のノートを見返してみても、記載されることはなかったと思います。おそらく、この文字をノートに記したのは初めてのような気がします(パソコン検索などではバンバカ打ちまくってましたが…)。
彼の評伝、資料集、そして児童文学に至るまで、様々な資料を総括すると、この江戸時代中期に活躍した麻田剛立を省いてしまったら、その後の日本の天文学は成り立たなかったであろうと思えるほどの人物だったということを思い知らされました。(そんなこともあって、最近の講座では、月面に残されたクレーター・アサダともども、必ずと言っていいほど「麻田」の名前を紹介しています(それともう一人はウィリアム・ハーシェル)。
これほどの人物は、西洋人でたとえるならケプラーの法則と同じ法則を独自に発見したということ以外当てはまる人物はいないのではないでしょうか?といのも、西洋では先取権をめぐる人間の欲望が顕著に現れているのに対して、麻田は謙虚(カール・セーガンがPale Blue Dotのなかで「天文学者ほど謙虚な人間はいない」といった言葉を残していますが、まさに彼のことをさしているように思えます)そのものの人物だったのではないでしょうか。それは歴史的に見て、確かに仕えるべき君主に黙って脱藩したことも手伝って、表立って目立ちたくなかったということもあるのでしょうが、その後の生活態度など見ても、それだけではなかったことがわかります。
あまり資料が残されていないから、今回紹介する小説などに描かれた剛立像をそのまま信じることはできませんが、作者はそれを意識してか、主観的な人物像ではない描き方をしていて、個人的には感情移入できない分好感が持てました。そして、物語の展開は史実に基づいた流れに沿っているので、彼の業績などはそのまま資料として使えるのではないかと思います。
というわけで、日本の天文学をしっかり勉強しようということで、その出発点は、やはり麻田剛立ということになるのではないでしょうか?
太陽四重奏曲(ハイドン)
夢をまことに(山本兼一)
本の表紙が月を眺める主人公の国友一貫齊(1778-1840)。
彼の前向きな考え方が多くの発明品を生み出していく。
読んでいてゾクゾクくるのは天文のくだり。
月面、太陽(ゾングラスと呼ばれる太陽専用フィルター)の観測。
ちょうど太陽の講座ネタにかぶさるくだり等、
これもまたタイムリーな小説となりました。
自分のペースでは、
このページ数だとかなりかかると思っていましたが、
展開のテンポよさもあいまって
(通勤時以外の時間も割いたこともあり)、
1週間で読み切りました。
私にとってはかなりのハイペース。
300年近く前の人物なのでわかりきっていることなのに、
唐突とも思えるエンディング(個人的に好き)。
何度も読み返したくなります。
星をたずねて 太陽(2019/11/20)
無事に日比谷の講座が終わりました(すでに3日経っている)。
今日は冬らしい雨。
書斎にはストーブにのせた鉄瓶から湯気の音だけ
(実際にはウィンダム・ヒルの音楽がなってます)。
何かが終わって、ぼーっ とする時間も必要。うん。
庭の葉の雫眺めたり、
書棚のタイトルだけ眺めたり、
CDラックのタイトル眺めたり…