夜想曲のスケッチ1

 君、季節はあちらからやって来て、僕らの生活に入りこんでくるものだね。このスケッチ帳は、島崎藤村のそれになぞらえて、僕なりの風景を描くつもりだ。これを同じ空の下にいながら、遠くにいる君へ届けようと思う。


誕生日おめでとう。


☆ ☆ ☆

 昨晩、大樹とふとんに潜ったときは、ザァザァという音が、壁一枚向こう側から大きな音で響いていた。それで今朝は雨こそやんでいたものの、千葉では紅葉の最盛期といったタイミングで多くの葉がぐっしょりと足下に並んでしまった。


 この一週間はずっと雨が続いていたような感じだった。昼間はこうして街路樹や、車窓に流れてゆく地域の雑木林、畑なんかの表情が太陽の下にさらされているから、日々の移り変わりを「意識」していれば実感できる。


 でも星空は雲に閉ざされてしまうと、秋の夜長と呼ばれるこの時期、ちょっと見ない間に驚くほど次の季節に様変わりして、たいそう驚かされてしまうこともしばしばだ。

 もうすぐ年末だ。この暮れを知らせてくれる星を僕は持っている。君も名前は知らなくても、無意識に北の空に認めていることだろう。その話はまた別の機会にしようと思う。


(「冬の使者」2010/11/26)