建築書 ウィトルーウィウス

 紀元前33〜紀元前22年の間に書かれたと言われる、ウィトルーウィウス(B.C.i。ローマの建築家)の建築書の第九書に十二星座に関する言及がされています。

「この巻では日時計の造り方について、それが宇宙における太陽の放射線から針の影を通じてどんなふうに発明されたか、どんな理によって針の影が長くなったり短くなったりするのか、それを説明いたしましょう(森田慶一訳)」

 こうした宣言の後に、黄道十二宮にまつわる天球の営みが綴られています。

 

f:id:tupichan:20190828194902j:plain

建築書(ウィトルーウィウス


 まったく関係のないジャンルの中に、こうした天文関係の書籍を見つけると、とても嬉しくなってしまいます。手前の本は普及版。もともとの出版(うしろのちょっと大柄な本)は昭和44年に東海大学出版会よりラテン文の対訳の体裁で出版されていました。

近世日本天文学史(下)ー観測技術史ー

近世日本天文学史(下)ー観測技術史ー / 渡辺敏夫著(恒星社厚生閣

第1章 総説

第2章 日本の天文台
 1. 天文台
 2. 京都梅小路天文台
 3. 京都西三条台暦所
 4. 江戸の天文台
5. 私設天文台
 6. 地方の観測所

第3章 儀象史
 1. 中国の儀器
 2. 渋川春海時代の測器
 3. 宝暦改暦時の儀器
 4. 寛政改暦前後に創製の儀器
5. 航海用天文観測器

第4章 天文観測用時計
 1. 漏刻
 2. 時計の伝来
 3. 時計の製造者
 4. 渋川春海の百刻環
5. 宝暦改暦のとき使用の時計
 6. 麻田派天文家使用の時計

第5章 望遠鏡の歴史
1. 望遠鏡の渡来
 2. 望遠鏡の制作者
 3. 麻田剛立と望遠鏡
 4. 岩橋善兵衛製作望遠鏡
5. 麻田立達の望遠鏡
 6. 望遠鏡の称呼
 7. テレスコッペン
 8. 望遠鏡の値段と普及度
 9. 避眩鏡(ゾンガラス)

第6章 経度・緯度の測定、子午線決定
1. 子午線決定法
 2. 緯度の決定法
 3. 経度の測定

第7章 太陽赤道経緯度測定


第8章 日食と月食
1. 日食と月食の記録
 2. 交食記録の整理と精度
 3. 観測技術と観測器
 4. 交食観測の難易
5. 食甚時刻の決定
 6. 日食各論
 7. 月食各論


第9章 惑星観測
1. はじめに
 2. 高橋至時と五星法
 3. 五星観測
 4. 金星・水星観測
5. 水星太陽面経過
 6. 五星観測の精度
 7. 天王星の観測


第10章 星食・凌犯
1. 凌犯について
 2. 凌犯記録
 3. 木星四衛星の食、掩蔽


第11章 本朝彗星史
1. 彗星の定義
 2. 彗星観測の記録
 3. 彗星観測法
 4. 観測の精度
5. ハレー彗星
 6. 各彗星記録

 

第12章 日本星図
1. 総説、中国の星座
 2. 中国星座の変遷
 3. 西洋星座と星名
 4. 個々の星の命名
5. 中国星座の組織構成
 6. 中国星図の構成
 7. 日本の星図
 8. 中国伝来の星図
 9. 保井春海の星図の研究
10. 日本の刊行星図
11. 天球儀について

 

第13章 清濛気差の観測


第14章 その他の観測
1. 太陽面現象
 2. 月面観測
 3. 惑星面観測



附録
1. 渋川・高橋両家の著書及び蔵書目録と所在
 2. 近世日本天文学史表(1601〜1873)


人名索引

書名索引

 

星のソムリエ(R)の本の紹介のページ

 

f:id:tupichan:20190825084116j:plain

星空に響く音楽

f:id:tupichan:20190716233042j:plain

星空に響く音楽

 私は会員ではないし、ボランティア(天体観望会が行われなかったので出番がほとんどなく辞めさせられてしまった)でもないし、聴きに行くことができませんが、ガリレイの音楽が奏でられることは非常に興味深いです。どこか他の場所でやってくれたら行けるのになぁ…

 

天界の音楽(ガリレオ)

シンセサイザー/星座 〜永遠なる四季〜 フランク・ベッカー

 今日も朝から強い雨が降っていて、庭のトマトのプランターが倒れてしまっていたほど。昨夜、風も強かったのか… ただ、被害はなく、まだ半分だけしか赤くなっていないプチトマトがたわわに実ったまま横たわっていました。

f:id:tupichan:20190706140237j:plain

シンセサイザー/星座 〜永遠なる四季〜 フランク・ベッカー


 小学生の頃、従兄弟の家に遊びにいくと、必ずレコードを聴かせてくれました。その中で見つけた一枚が「星座」という名のアルバム。原題には「星座」という言葉は使われていませんが、レコード会社の担当者が苦心してつけたのでしょう。裏ジャケットには曲の副題となっている星座、もしくは星の並びを表す星図が掲載されていて、それぞれの星々を楽譜にプロットさせてメロディを充てていました。
 その頃のシンセイサイザーの流行りと言えば、冨田勲の作品群で『惑星』『宇宙幻想』は天文ファンには一番の人気作でした。

 この『星座』は、冨田勲のシンセと比べると、音色が一色で、しかも雰囲気は良いとしても音楽を楽しむという点では個人的には消化不良気味でした。ただ、天球に貼付いた星の位置を楽譜に当てはめて音型にする、という試みは、たとえばジョン・ケージの『南天のエチュード』に先例があるので、天球の音楽を探し求めている私には、昔の記憶を頼りに、アーティストとか、ジャケットがどんなだったかを思い出しながらレコードを改めて探し求め(音源は従兄弟が所有していて、「どっかに行っちゃったよ〜」と行方不明になってしまったため…)ようやくヤフオクで見つけることができました。

 30年ぶりぐらいに聴いたレコードでしたが、やっぱり消化不良は変わらず(笑)。しかし裏のジャケットには興味が湧きました(レビュー)。

 

Side A

1.冬 スターパターン・オリオン オーロラ
2.春 スターパターン・北斗七星 エクオノクス(分点)

Side B
1.夏 スターパターン・三角座 霧の大地の中へ
2.秋 スターパターン・ペガサス 孤独
 

二挺のヴァイオリンのためのソナタ(ルクレール)

f:id:tupichan:20190703232420j:plain

ルクレール:2つのヴァイオリンのためのソナタ 作品3、12

 会社帰り、最寄り駅を降りて先ずすることは、駅舎から見上げる空の様子。天気予報が九州方面からの大雨の知らせを伝えていたから、今日は見上げるまでもなく雨が落ちているのかと思っていたら、どんよりとした灰色の雲が、街灯に照らされて、昼間のような明るさを足元まで投げかけていました。そんな空模様に二羽の鳥が目の前を横切っていきます。街灯の白い光に照らされて、一瞬真っ白なコサギだと思って眺めている、羽音もなく顔がまん丸い… 家の近くにもやってくるフクロウの輪郭。番(つがい)だろうか? そんなことを考えているうち、あっというまに森の中へ。

 

 梅雨らしい空。今週末は七夕。晴れてくれれば良いけれど。町のいたるところに願いの短冊を吊るすための笹がスーパーなどに置かれるようになりました。

 

 どんよりとした曇り空が続き、「星の輝きってどんなだったかなぁ」などと記憶喪失まがいの思いに駆られたときはバロックがいい。特にチェンバロの金属的な音はじめじめの空気を突き破ってくれ、冷ややかな印象があります。しかし今日はルクレールのヴァイオリン・ソナタ。それも通常のソナタではなく、伴奏なしの二挺のためのソナタ。 ジャン=マリー・ルクレール1697-1764)はフランスの作曲家。

 写真に写っているアルバムをきっかけに、私は無伴奏で、かつ2挺のヴァイオリンのための作品があることを知り、その楽しさも知ることができました。日本盤(右)は作品3のみしか収録されていませんでしたが、輸入盤は、その後にレコーディングされた作品12を加えた2枚組のお得盤(笑)。一番左のは、最近レコーディングされたアルバムですが、抜粋盤。しかし私のお目当ては、このアルバムのメインである『音楽の愉しみ』という組曲。この組曲には別に『音楽の慰め』とか『音楽の気晴らし』という日本語が与えられていますが、原題は『RÉCRÉATIONS DE MUSIQUE』作品番号は6(第1集-1736-)と8(第2集-1737-)があります。テレマンの『音楽の忠実なる師』とか『食卓の音楽』てきな組曲です。

 

 この頃の天文学と言えばアンダーシュ・セルシウス1701-1744)が、フランス人天文学者ピエール=ルイ・モロー・ド・モーペルテュイ(1698-1759)とラップランド探検に参加。地球の形が楕円形であるというアイザック・ニュートン(1642-1727)の考えを立証しました。

 フランス人であるルクレールは、当時の天文学界がイギリス対フランスといった図式が表面化していたから、(興味があったかどうかはわかりませんが)どんな気持ちでこのニュースを聞いていたのでしょうか?

変身物語・1

f:id:tupichan:20190623084659j:plain

変身物語・1


  星座はギリシア神話が繰り広げられる舞台となっていますが、そのほとんどのネタ(エピソード)は、B.C.43生まれのローマの詩人オウィディウスの『変身物語』です。

 1966年に出版された人文書院版の田中秀央、前田敬作訳による『転身物語』と、20年後に新訳された岩波文庫版の中村善也訳『変身物語』、そして今年出版された京都大学学術出版会版の高橋 宏幸訳とでは、冒頭第一巻の「世界の始まり」の場面では以下のような言葉の使い方の違いが、無謀にも「う〜ん、言語で読んでみたいな」と思わせました。

 

田中秀央、前田敬作訳(1966)
「大地もまだ、それをつつむ大気の中に浮かびながら…」

中村善也訳(1986)
「大地が、みずからの重みで釣り合いをたもちつつ…」

高橋宏幸訳(2019)
「地球はまだ、まわりを包む大気の中には…」

 

 確かに現代人には「地球」は当然の事実として定着しているので、何ら違和感はありませんが、当時の人々にとって「地球」という言葉を使っていたのかと言う疑問がわき起こってしまいました。ちなみに日本にこの言葉が伝わって来たのは、年の宣教師マテオ・リッチが1602年に出版した世界地図『坤輿万国全図』中に見られる言葉です(日本には江戸時代初期に輸入されました)。当時の日本には、暦の正確さが求められた板ので、地球が丸かろうが、宇宙がどれぐらい広かろうが、天文方には関係のなかった時代だったようです。

 

 京都大学学術出版会版の2巻目は今年の出版予定に入っていないので来年まで持ち越されるようです。楽しみなのはパウサニアスの『ギリシア案内記』がスケジュールに告知されていることですね〜 なお、今回の第1巻には第一巻から第八巻までが収録されています。

 

☆おととい(6/20)、久しぶりに上野で観望会が行われました。とはいっても、条件はあまり良くなく、どの天体に望遠鏡を向けても流れ行く雲に阻まれて、しばし皆で上を見上げては待っている時間が長くなってしまいました。今振り返れば「あれで良く星が見れたなぁ」という状況下です。夏至も過ぎて、これからはだんだん夜が長くなり始める時期なのに、梅雨真っ盛り。今日もどんより。