二挺のヴァイオリンのためのソナタ(ルクレール)

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ルクレール:2つのヴァイオリンのためのソナタ 作品3、12

 会社帰り、最寄り駅を降りて先ずすることは、駅舎から見上げる空の様子。天気予報が九州方面からの大雨の知らせを伝えていたから、今日は見上げるまでもなく雨が落ちているのかと思っていたら、どんよりとした灰色の雲が、街灯に照らされて、昼間のような明るさを足元まで投げかけていました。そんな空模様に二羽の鳥が目の前を横切っていきます。街灯の白い光に照らされて、一瞬真っ白なコサギだと思って眺めている、羽音もなく顔がまん丸い… 家の近くにもやってくるフクロウの輪郭。番(つがい)だろうか? そんなことを考えているうち、あっというまに森の中へ。

 

 梅雨らしい空。今週末は七夕。晴れてくれれば良いけれど。町のいたるところに願いの短冊を吊るすための笹がスーパーなどに置かれるようになりました。

 

 どんよりとした曇り空が続き、「星の輝きってどんなだったかなぁ」などと記憶喪失まがいの思いに駆られたときはバロックがいい。特にチェンバロの金属的な音はじめじめの空気を突き破ってくれ、冷ややかな印象があります。しかし今日はルクレールのヴァイオリン・ソナタ。それも通常のソナタではなく、伴奏なしの二挺のためのソナタ。 ジャン=マリー・ルクレール1697-1764)はフランスの作曲家。

 写真に写っているアルバムをきっかけに、私は無伴奏で、かつ2挺のヴァイオリンのための作品があることを知り、その楽しさも知ることができました。日本盤(右)は作品3のみしか収録されていませんでしたが、輸入盤は、その後にレコーディングされた作品12を加えた2枚組のお得盤(笑)。一番左のは、最近レコーディングされたアルバムですが、抜粋盤。しかし私のお目当ては、このアルバムのメインである『音楽の愉しみ』という組曲。この組曲には別に『音楽の慰め』とか『音楽の気晴らし』という日本語が与えられていますが、原題は『RÉCRÉATIONS DE MUSIQUE』作品番号は6(第1集-1736-)と8(第2集-1737-)があります。テレマンの『音楽の忠実なる師』とか『食卓の音楽』てきな組曲です。

 

 この頃の天文学と言えばアンダーシュ・セルシウス1701-1744)が、フランス人天文学者ピエール=ルイ・モロー・ド・モーペルテュイ(1698-1759)とラップランド探検に参加。地球の形が楕円形であるというアイザック・ニュートン(1642-1727)の考えを立証しました。

 フランス人であるルクレールは、当時の天文学界がイギリス対フランスといった図式が表面化していたから、(興味があったかどうかはわかりませんが)どんな気持ちでこのニュースを聞いていたのでしょうか?

変身物語・1

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変身物語・1


  星座はギリシア神話が繰り広げられる舞台となっていますが、そのほとんどのネタ(エピソード)は、B.C.43生まれのローマの詩人オウィディウスの『変身物語』です。

 1966年に出版された人文書院版の田中秀央、前田敬作訳による『転身物語』と、20年後に新訳された岩波文庫版の中村善也訳『変身物語』、そして今年出版された京都大学学術出版会版の高橋 宏幸訳とでは、冒頭第一巻の「世界の始まり」の場面では以下のような言葉の使い方の違いが、無謀にも「う〜ん、言語で読んでみたいな」と思わせました。

 

田中秀央、前田敬作訳(1966)
「大地もまだ、それをつつむ大気の中に浮かびながら…」

中村善也訳(1986)
「大地が、みずからの重みで釣り合いをたもちつつ…」

高橋宏幸訳(2019)
「地球はまだ、まわりを包む大気の中には…」

 

 確かに現代人には「地球」は当然の事実として定着しているので、何ら違和感はありませんが、当時の人々にとって「地球」という言葉を使っていたのかと言う疑問がわき起こってしまいました。ちなみに日本にこの言葉が伝わって来たのは、年の宣教師マテオ・リッチが1602年に出版した世界地図『坤輿万国全図』中に見られる言葉です(日本には江戸時代初期に輸入されました)。当時の日本には、暦の正確さが求められた板ので、地球が丸かろうが、宇宙がどれぐらい広かろうが、天文方には関係のなかった時代だったようです。

 

 京都大学学術出版会版の2巻目は今年の出版予定に入っていないので来年まで持ち越されるようです。楽しみなのはパウサニアスの『ギリシア案内記』がスケジュールに告知されていることですね〜 なお、今回の第1巻には第一巻から第八巻までが収録されています。

 

☆おととい(6/20)、久しぶりに上野で観望会が行われました。とはいっても、条件はあまり良くなく、どの天体に望遠鏡を向けても流れ行く雲に阻まれて、しばし皆で上を見上げては待っている時間が長くなってしまいました。今振り返れば「あれで良く星が見れたなぁ」という状況下です。夏至も過ぎて、これからはだんだん夜が長くなり始める時期なのに、梅雨真っ盛り。今日もどんより。

星占いの文化交流史

 以前図書館で借りた本ですが、絶版となってしまいました。古書で探すと結構な高値が着いていたので、価格が下がるまで待っているとなんと復刊の知らせが!新装版としてめでたく先週復刊されました(奥付では2019/05/20)。タイトルはシンプルに「星占いの文化交流史」。新装版と言うからには、どこが変わっているのか確認したところ、見た目ははっきりとわかりますが(表紙が違う)、先生のWebページに掲載されている正誤表、つまり本文の誤植が訂正されています。

 

https://www.cc.kyoto-su.ac.jp/~yanom/pdf/errata.pdf

 

 もともと天文学占星術から生まれ、両者の顔を持つケプラー曰く「愚かな娘である占星術は、一般では評判のよろしくない職業に従事し、その利益によって、賢いが貧しい母である天文学を養っている」ケプラーは数理によって天の調和を導くため、星占いを行なっていたのです(『コスモス』の中でカール・セーガンは最期の伝統的占星術師と書いていました)。こうした経緯のある両者ですが、現在、両者は袂を分けているので、星のソムリエ的にも個人的にも、星占いを顧みることはないのですが、ケプラーまでの占星術の辿って来た歴史、人びとに影響を与えていった流れには非常に興味を持って接して来ました。だからこうした本はよく読みます。ただし、私が読む、この種のほとんどすべてには、日本人の占星術師の権威と呼ばれている方や、現役占星術師の「推薦」はありません(笑)。

 帯のコピーにあるように
「星占いの起源と歴史を知っていますか?」 
「科学としての占星術の発展と伝播と追い、私たちの古代・中世イメージを覆す!」

 といった内容に興味のある方は「安心して」読むことができます。

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星占いの文化交流史(矢野道雄)

 

第一章 バビロニアから日本まで
1.西安の夏
2.ユーラシアの舞台
3.東寺の火羅図

第二章 占星術の始まり
1.創造神話
2.観測記録
3.ホロスコープ占星術の誕生

第三章 ヘレニズムの占星術
1.宇宙論占星術
2.ヘレニズムという時代
3.同心天球と曜日の順序
4.エジプトの役割
5.『テトラビブロス
6.エジプトの占星術

第四章 地中海からインドへ
1.海上交通の発達
2.インドの惑星と曜日の順序
3.ラーマのホロスコープ
4.ヴァラーハミヒラ
5.バビロニア南インド
6. 医学と占星術
7. インドの黄道座標

第五章 サーサーン朝ペルシア

第六章 インドから中国へ
1.インド古来の占い
2.科学の乗りものとしての仏教
3.新しい占星術

第七章 中国から日本へ
1.宿曜道
2.『七曜』

第八章 イスラーム世界の占星術
1. ペルシアからのイスラーム世界へ
2.歴史的占星術
3.クーシュヤールの占星術
4.『明訳天文書
5.アル・ビールーニーの『星学入門』

第九章 ジャイブルの夏
1. 私の研究計画
2.ジャンタルマンタル天文台
3.ジャイ・シング王のホロスコープ

 

 

星図

中学生の頃、星図が欲しくて、
天文ガイドを眺めていたら掲載されていたのがこれ。
なんか他とちょっと違うところに惹かれ注文しました。
他の星図と違うところはA3サイズの横長。
星座線とか一切入っていないので、
藤井旭さんの絵姿を頼りに線を引いて使っていました。

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星図篠田皎(SHINODA, AKIRA ASTRO ATLAS)

 

天文意外史 - 斉田博(星の手帖)

先日の『星を近づけた人びと』の続編ともいえる
季刊誌『星の手帖』に連載されていた『天文意外史』
これもまた、天文史をわかりやすく解説してくれています。
ページ数の都合からでしょうか?
全話ではありませんが
のちに『宇宙の挑戦者』としてまとめられました。

 

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天文意外史 斉田博

星の手帖 Vol.1 天文意外史1「143年前の"未知との遭遇"」
星の手帖 Vol.2 天文意外史2「プラチナで望遠鏡を作れ」
星の手帖 Vol.3 天文意外史3「悲劇の日食観測」
星の手帖 Vol.4 天文意外史4「断頭台に消えたバイイ」
星の手帖 Vol.5 天文意外史5「マリアとジョージの恋」
星の手帖 Vol.6 天文意外史6「チコ・ブラエの鼻」
星の手帖 Vol.7 天文意外史7「まぼろしの彗星1921e」
星の手帖 Vol.8 天文意外史8「大発明!彗星自動発見機」
星の手帖 Vol.9 天文意外史9「片腕の魔術師・シュミット」
星の手帖 Vol.10 天文意外史10「彗星発見に情熱を燃やしたスイフト

星の手帖 Vol.12 天文意外史11「巨人望遠鏡の影に」
星の手帖 Vol.13 天文意外史12「ハーシェル 天王星発見の舞台裏」
星の手帖 Vol.14 天文意外史13「近眼の鬼才 ケプラー
星の手帖 Vol.15 天文意外史14「望遠鏡の発明前後」
星の手帖 Vol.16 天文意外史15「ツィオルコフスキーの復活」
星の手帖 Vol.17 天文意外史16「メルボルンのクックの家」


1回だけお休み(Vol.11)し、
この後を石田五郎さんが引き継ぎました。
その話はまた後日。

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宇宙の挑戦者(斉田博)

チコ・ブラエ(天文意外史6)
近眼の鬼才ケプラー(天文意外史13)
肉眼対望遠鏡、世紀の対決
プラチナで望遠鏡を作れ(天文意外史2)
断頭台に消えたバイイ(天文意外史4)
月人デッチあげ事件始末記(天文意外史1)
海王星発見のかげに
巨人望遠鏡のかげに(天文意外史11)
マリアとジョージの恋(天文意外史5)
彗星発見に情熱を燃やしたスイフト(天文意外史10)
大発明!彗星自動発見機(天文意外史8)
片腕の魔術師・シュミット(天文意外史9)
彗星クライドと呼ばれた男
悲劇の日食観測(天文意外史3)
まぼろしの彗星1921e(天文意外史7)
ヘールの夢
ハーシェル 天王星発見の舞台裏(天文意外史12)

星を近づけた人びと/ 斉田博

今から10年前に星のソムリエの資格を取得し
観望会や講座のネタに目を付けたのがこの本です(笑)。
この本を手にしてからは、手放せず、斉田さんの本をあれこれ漁りました。

星を近づけた人びと(上)
1.恒星の視差を求めて
2.ハリーのセントヘレナ島遠征
3.肉眼対望遠鏡、世紀の対決
4.ヘベリウス『恒星カタログ手稿』放浪記
5.恒星も動いている!
6.固有運動の大きい星
7.ブラッドリーの偉大な発見
8.ライトという天文学者を知っていますか
9.夜空はなぜ暗い?
10.オルバースのパラドックスのルーツ
11.海上における経度発見賞のゆくえ
12.ハーシェルの音楽歴
13.ジョン・ハーシェルの側面
14.独学の大天文学者ベッセル
15.グリニジ天文台長ポンドの悲劇
16.星を近づけた人フラウンホーファー
17.太陽研究の夜明け
18.鷲の目を持っていたドーズ
19.発見をしなかった大天文学者
20.スミソンの奇妙な贈物

星を近づけた人びと(下)
21.アメリカ最初の女性天文学者
22.ミッチェルのヨーロッパ旅行
23.ウェッブ神父の名著
24.『アストロノミカル・ジャーナル』の創刊者
25.スミソンの奇妙な贈物
26.D線上のあれやこれや
27.スペクトル型の元祖セッキ神父
28.太陽と地球の年齢をめぐって
29.太陽の温度二転三転
30.ピラミッドを建てようとした男
31.プロキオンの伴星を追って
32.恋のスペクトル
33.日中にコロナ写真をとろうとした人たち
34.アンドロメダ座S星の発見
35.偉大なるアマチュア、バーナム
36.写真星図のはじまり
37.エーテルが存在理由を失った時
38.今世紀最高の観測者
39.あごひげおじさんバンビー
40.太陽以外に惑星系を追う

 

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星を近づけた人びと

 

上野観望会(2019−05−17)

3月以来の晴天に恵まれて夏時間(19:30〜)になって
初めての観望会です。
空気が乾燥していたため透明度も良く
日が沈んでからはちょっと肌寒くもありましたが、
東の空に顔を出していた月を始め二重星などの天体を楽しみました。
小さなお子さんが沢山、元気よく月夜の観望会が行なわれました。

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東の空に月、そしてスカイツリー